この怖い話は約 3 分で読めます。

449 1/4 sage 2005/06/12(日) 12:28:17 ID:1tlDSaoL0

子供の頃近くの山が遊び場で、毎日のように近所の同世代の友だちと一緒にその山で遊んでた。
この山の通常ルート(小さな山なので、登山道というよりは散歩道)とは別に、獣道や藪をつっきった先には謎の廃屋があり、俺たちにしてみれば格好の遊び場だった。
小さな山だったから、俺たちは道のあるとこ無いとこ全て知り尽くしていた。
山はある意味、俺たちがヒエラルキーのトップでいられる独壇場だった。

しかし俺たちにも天敵がいた。それが”けんけん婆あ”だ。

廃屋に住み着いているらしい年取った浮浪者で、名前の通り片足がなかった。
けんけん婆あは俺たちに干渉してくることはなかったが、俺たちは山で遊んでいるとき、よく視界の端で捉えては気味悪がっていた。

しかし好奇心旺盛な子供にとっては格好のネタであったのも確かで、どれだけけんけん婆あの生態を知っているか、どれだけけんけん婆あに気付かれずに近づけるかが、一種のステータスになっていた。

俺の知る限りどちらかがどちらかに声をかけた、なんてことは皆無だった。

その日、俺たちはかくれんぼをすることになった。
隠れることのできる範囲は山全体。
ものすごい広範囲のように聞こえるが、実はこの山でまともに隠れることのできる範囲というのはごく限られている。

どちらかというと鬼はそれら隠れることのできる場所を巡回するだけという、隠れる側としてはほとんど運次第な遊びだった。
で、俺はその「定番の隠れ場所」のひとつである廃墟に隠れることにした。

廃墟の壁には錆付いたトタン板が立てかけてあり、俺はそのトタン板の下に隠れていた。
耳を澄ましていると、「○○ちゃんみーつけた!」という声が遠くの方でしたりして、その声の方向から今鬼がどこにいるのかを推察しながらドキドキしていた。

で、鬼のいる場所が次第に近付いてきて、あっち行け!でもそろそろ次は俺かなとか思っていたとき

「けんけん婆あが基地ンほうに行ったぞー!!」

450 2/4 sage 2005/06/12(日) 12:28:37 ID:1tlDSaoL0
という鬼の叫び声が聞こえた。
基地というのは俺の隠れている廃墟のことだ(俺たちは秘密基地と呼んでいた)。
しかしこれはカマをかけて隠れている人間を燻り出す鬼の作戦かもしれないし、例え本当でも、これはけんけん婆あをすぐ近くで観察して英雄になれるチャンスだ。

そう思って、俺はそのまま隠れ続けていたんだ。

とさっ とさっ とさっ

まさにけんけんするような足音が聞こえてきたのは、そのときだった。
この時点でもう後悔しまくり。

とさっ とさっ とさっ

片足で枯葉を踏む音が、もう廃墟のすぐ前、俺から5メートルほどしか離れていない場所まで近付いている。
見つかったら殺される!
そんな考えに取り付かれて、俺はもうマジビビリだった。
そこで俺はよせばいいのに、いきなり隠れ場所から飛び出して猛ダッシュで逃げるという選択肢を選んだ。
もう飛び出すやいなや、けんけん婆あのほうは絶対に見ないようにしながら必死で友だちの所まで逃げた。
で、事情が良く分かっていないみんなを半分引きずるかたちで下山。
そこで始めて詳しい事情をみんなに説明した。
でもやはり、あの恐怖は経験した本人にしか分からないわけで。
逆に友だちは、そんなに近くまでけんけん婆あに近付いたことをすげぇすげぇと褒め称える始末。

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