洒落怖
お化け騒動

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昔、小学校の担任のF先生から聞いた話。
第二次世界大戦中、小学生だったF先生(以下F少年)は、集団疎開でとある田舎のお寺に
預けられた。
寝泊りにはお寺の本堂の、一番広い部屋をあてがわれていたが、問題はトイレ。
ご住職と奥さんは、本堂のトイレを使っていたが、疎開者は別のトイレを使わ
なければならなかった。
ところがそれは、本堂からやたらと離れた場所にあり、しかもそこへ行くには、
寂しい一本道を通らねばならず、その両側はなんと墓場。
それも土葬だったようで、ところどころ腐った木の棺を突き破って、死体の
腕や足が突き出していることがあり、子供たちは昼間でも目をつぶってトイレまで
走って用を足しに行っていた。

夜ともなれば、当然ながらその恐ろしさは一層凄まじく、皆なるべく行かないように
していたが、どうしても我慢できないときもある。
その日も一人、夜中に恐々、用足しに出て行った子がいた。

突然、凄まじい悲鳴が聞こえ、飛び起きたみんなが見たものは、涙と汗まみれの
顔をして、四つん這いに這って来るその子の姿だった。

141 本当だから怖い話 2007/06/28(木) 15:26:06 ID:g7As7s9e0
恐怖に全身をガタガタ震わせながら、その子は、
「おばけ!おばけが出た!!」と叫んで泣き出した。
皆でなんとか落ち着かせて話を聞いてみると、トイレ(というより、木造便所
なわけだが)の扉を開けると、中から髪を振り乱し、死に装束をまとった女の
幽霊が迫ってきたのだという。

その子の怖がりぶりはひどいものだったが、余りにも典型的な幽霊話だったために、
誰も本気にしようとせず、「まあ、夜中のことだし、恐怖心から何かを見間違えた
のだろう」ということになって、その夜はその子をなだめすかして終わった。

しかし、この話はこれだけでは終わらなかった。

次の日の夜中。
やはり、我慢できずに用を足しに行った子がいた。

突然、凄まじい悲鳴が聞こえ、飛び起きたみんなが見たものは、涙と汗まみれの
顔をして、四つん這いに這って来るその子の姿だった。

「おばけ!おばけが出たー!!」

便所の扉を開けると、髪を振り乱した、死に装束の女の幽霊が迫ってきたというのだ。

146 本当だから怖い話 2007/06/28(木) 16:19:33 ID:g7As7s9e0
子供たちの、その便所への恐怖はさらに増した。
昼間でもあれほど恐ろしい場所なのに、こうなっては夜中にあの場所へ行く勇気
など、おきるわけがない。
しかし、悲しいかな、やはり我慢できないときはある。
その後も、夜中に用を足しにいっては、幽霊に出くわして逃げ帰る子供が続出した。

その幽霊はやはり、髪を振り乱した死に装束の女の幽霊だという。

ところでF少年は、名うてのガキ大将だった。
ガキ大将というものは、ケンカが強くて、威張っているだけではいけない。
頼れるリーダーとして、義務と責任があるものなのだ。
恐ろしい幽霊に対抗できる、期待の星として、自然と子供たちの注目は
F少年に注がれた。こうなっては、後には退けない。

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