洒落怖
ケイちゃん

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ある若い女性の話。彼女は1年前に夫と結婚して妊娠中であった。
田舎へ帰省するため、夫が運転する車で山道を走っていた。
渋滞につかまってしまい、夜遅くなってしまった。
細い道を急いで走っていると、いきなり目の前に黒いものが現れ、衝撃とともに彼女は気を失った。
意識をとり戻すと、フロントガラスにヒビが入り、べったりと人の顔が貼りついている。
「やってしまった・・・」
人を轢いてしまった。
運よく通りすがりの車に発見され、彼女たちは病院に担ぎ込まれた。彼女とお
腹の子は無事だったが、夫は返らぬ人となった。その夜は、ひたすらに泣いた。
病院側は、今回の事故は警察に通報しなかった。

768 obako 2007/06/22(金) 22:34:54 ID:FbIRBH/u0
その後、引越して別の地に移り、彼女には息子が生まれ、すくすくと育った。
小学5年生にあがったころ、彼女は息子のために携帯電話を買ってやることにした。
息子も欲しがっていたし、何より愛する息子の安全を考えてのことだった。
「最近、お友達とは遊んでるの?」
ある日、彼女は息子に聞いた。息子はあまり出かけず、友達もあまりいないよ
うなので、心配なのだ。
「うんん。遊んでるよ。今日もいっぱい話したよ」

「あら、いっぱい話したの?」
「ケータイでいっぱい話すんだよ。」
どうやら近所の友達ではないようだ。その子はケイちゃんという名前だそうだ。
毎日のように、息子はケイちゃんと携帯で話していた。不思議なことに、息子
は通話の最後に決まってこういうのだった。
「お母さん、ケイねぇ、あと120キロだって」

769 obako 2007/06/22(金) 22:36:13 ID:FbIRBH/u0
「え?なあにそれ?」
「あと120キロだって」
意味はよくわからなかった。夕食のとき、彼女は聞いてみた。
「ねぇ、タカちゃん。ケイちゃんってどんな子なの?」
「えっとねぇ・・・ケイはねぇ・・・んふふ~。」
息子が顔を赤らめたので、彼女はガールフレンドでもできたのだろう、と思った。
「ケイねぇ、遠いんだよ。」
少し自慢げに息子は言った。やはりケイちゃんの話になると、息子は良く分か
らないことを言った。
そんな感じで、毎日のように息子は友達と話し、決まって最後はこういうのだった。
「ケイねぇ、あと120キロだって」

771 obako 2007/06/22(金) 22:37:16 ID:FbIRBH/u0
「ねぇ、タカちゃん。ケイちゃんといつもどんな話するの?」
「ケイねぇ、会いたいけど動けないんだって。」
彼女は夏の余暇を利用して、息子と実家に帰ることにした。息子はおばあちゃん
の家に泊まりたいというので、1週間ほど実家に預けることにした。いつになく、
息子は嬉しそうに携帯の友達と話しこんでいた。
実家から帰るとすぐ、彼女は母に電話をいれた。
「タカは大丈夫?一週間よろしくね。タカの声が聞きたいわ」
「はいよ。ちょっと待っててね」
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