洒落怖
復讐

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俺には大学院生の兄がいる。その兄は何がきっかけか知らないけどここ数年で様子が変わってしまった。
昔は気さくで大らかな性格だったのだが今では急に怒鳴ったり笑ったりとしばしば情緒不安定な振る舞いを見せる。心なしか口調もきつくなった。
そして一番の変化は普通の人には見えないもの、所謂幽霊の類が見えているようだってこと。
そんな兄の最近の話をしようと思う。

334 本当にあった怖い名無し sage New! 2013/01/25(金) 20:26:04.19 ID:+KkaE0hI0
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年末年始も帰省してこないような親不孝の兄が、去年の暮れ久しぶりに実家に帰ってきた。12月29日だった。帰ってくるなり
「車を出せ、ホームセンターに行くぞ」
自分で運転したらいいだろと思ったが、久しぶりの兄との再会だったし、慣れない雪道を運転させては危険だと思い二つ返事で従った。

買い物の目的はどうやら大掃除用の洗剤なんからしく、なんとも殊勝なことだと感心した。
買い物リストは携帯にメモっており、それを見ながらひとつひとつカートに入れていった。
洗剤を2種類、バケツを1つ、あとは雑巾やガムテープ、マスク等を購入した。
少し気になったのが、マスクはよく見る白地のものじゃなく、除草剤なんかを散布するときに使用する少し厚手の、ちょっとしたガスマスクのような立派なものだったこと。
「いい買い物をした」
などと上機嫌な兄を助手席にのせ再び雪道を走らせた。

335 本当にあった怖い名無し sage New! 2013/01/25(金) 20:27:16.89 ID:+KkaE0hI0
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翌日30日、我が家では大掃除の日。
兄は昼過ぎまで寝ていた。午後になって起きて来たかと思うと遅めの昼食を食べまた眠ってしまった。
昨日の準備の張り切りようはなんだったのかと思いながら無理やりたたき起こしトイレ掃除をやらせた。

更に翌31日、大晦日。
夕食後は居間で兄弟(兄・自分・妹)3人仲良くガキ使を見ていた。もう数時間で年が明けようというころ、兄が除夜の鐘を突きに行こうと言い出した。
小学生のときによく祖父に連れられて近くのお寺の鐘を突きにいったことがあったが、兄が実家を離れてからはめっきり行かなくなっていた。
妹は半分寝ていたので(それでもガキ使を見ながら時折笑うのが怖かった)そのままそっとしておいて兄と二人でお寺へ向かった。
車を走らせていると兄がお寺に行く前に寄りたいところがあると言い出した。
そこは全く正反対の方向だったが、その先にあるコンビニにでも寄って行きたいのだろうと思って兄の支持に従った。
「車を止めろ」
停車したのは母校の○○中学、その前にある電話ボックスのすぐ隣だった。

337 本当にあった怖い名無し sage New! 2013/01/25(金) 21:20:25.90 ID:+KkaE0hI0
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ここでこの電話ボックスにまつわる曰くについて話しておく。
俺がこの中学に通うようになる以前から、更には兄が中学生だった以前からその噂は存在していたんだと思う。
パターンとしてはありがちなものだ。電話ボックスのそばを通っていると突然呼び鈴が鳴り出す。
そして受話器に出ると得体の知れないうめき声やお経、水の音なんかが聞こえてくるというものだ。
ただの悪戯かも知れない。それに、そんな気味の悪い内容ばかりなら誰も受話器を取らなそうなものだけど。
それでもこの怪談が多くの生徒を惹きつけたのは、稀にその電話が未来の自分と繋がるというからだ。
ある噂は受話器の向こうの自分は死んでいるんだという。ある噂は受話器の向こうの自分は余命を教えてくれるという。会話はできるだとかできないだとか、
こちらから話しかけると寿命が半分になるなんてのもあった。

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