Categories: 洒落怖

人影

この怖い話は約 3 分で読めます。

流れぶた切り&勝手に自分語りになりますが、スレタイにそって話します。
長いので二分割します。

私が実家に帰ったとき、体験したことです。
私は仕事を辞め、某職員試験勉強に打ち込んでいました。

実家にいる間、毎朝愛犬の散歩をしていたのですが、ある日、犬がいつもより早く起きました。
午前4時10分くらいだったかと思います。
いつもは午前5時30分前後に散歩に行くので、おかしいな~と思いました。
しかし、それでも犬があまりに五月蝿く急かすので、私は怖いながらも散歩することにしました。

外に出て、いきなりどんよりとしました。
ド田舎なのもあり、まさに一寸先は闇、というくらい真っ暗なのです。
しかも、霧がぶわーっと立ち込めていて、纏わり付いてきます。
懐中電灯の明かりが非常に心許なく、照らした先も霧で飲み込まれます。
でも、怖がりの怖いもの好きな私は、歩みを進めました。

道中には、夜中に遭遇したくない嫌なものが多々ありました。
地元のさびれた神社の長い階段、切れかけの蛍光灯の明滅、霧の中をぼんやり映すカーブミラー、傾斜地に並ぶ墓の群れ。
隣の犬の荒い呼吸もなんだか恐ろしかったし、樹木にもたれ掛かる人間そっくりの案山子にも絶叫しかけました。
静けさの中、足音も響いて、まるで肝試しでした。

243 本当にあった怖い名無し sage 2012/09/15(土) 19:34:33.82 ID:r1Y4SZt6O
ただ、意外にも行きはあまり怖くありませんでした。
かくして、調子に乗った私は、帰り道に田畑と森に囲まれた砂利道を選んだのです。
もちろん、森ともなると霧がものすごく、霧の町・ロンドンってこんな感じなのかな……などと無駄なことを考えていました。
田畑に浮かぶ、無表情の案山子の群れと、赤く光る烏除けに怯えながら、帰りも普通に歩いていました。

しかし、家まであと200mのところでした。
『……ちゃん』
という呼び声がどこからか、聞こえました。
なんだろう?と思いながら、周りを見渡しますが、霧でよく見えません。
『ぁ~ちゃん』
もう一度、呼び声が聴こえ、そちらの方を少しだけ目を凝らして見ました。

そこには、黒い人影が立っていました。
シルエットしか見えませんが、おそらく上半身は人が、口元に手を当てて、おーいと呼ぶような形だったかと思います。
足を肩幅くらいに開いており、どうやらこちらを見ているようでした。
もちろん、暗いので、それに目がついているのか、背中を向けているのか、分かりません。
でも、確かに私のいる方向を見ている気がしたのです。

私は先程まで、幽霊の類に遭遇せず、調子に乗っていた分、一気に背筋が凍りつきました。
しかも砂利道。足音を立てずに帰ることもできないので、私はそれに気づかない振りをしてやり過ごすようにしました。
もちろん、向こう側は見ず、ただひたすら前だけを見て、家までずんずんと歩いていきました。

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