Categories: 洒落怖

曖昧な記憶

この怖い話は約 3 分で読めます。

当時、私は16~17歳でした。
私は京都に住んでおり、私たちの友人の間では夏休みを利用してあるバイトが恒例になっていました。
それは仲間内で『天国のバイト』と呼ばれており、とあるさびれた駅の駅員のバイトです。
今もあるので、固有名詞は出さないでおきます。
持ち場は全部で3箇所あり、
そのどれもが1時間に3本程、観光客を運んでくるのみで、
その前後5分以外はクーラーの効いた駅員室で漫画を読んだり、
ゲームをしたり、宿題をやったりと、好き放題でした。
それが『天国』と言われる所以です。
他の駅員は、定年退職し、職場を求めた嘱託のおじいさんばかりで、
「今日はなんやしんどいですわぁ」などと言うと、孫ほど離れた私たちが可愛いのか、
嘱託さん達は「それじゃあ宿直室で寝てきたらどうや?」なんか言ってくれるほどヌルイバイトだったのです。 225 名前: 223 2006/07/27(木) 11:10:03 ID:ja8/AXvJ0
それほど美味しいバイトが一般に募集されるはずもなく、
このバイトは自然に毎年、○○高校在学の生徒で埋め尽くされていました。
バイトをしている者は3回目のバイト、つまり3年を迎えると、
次の年そのバイトに入れる「選ばれた人」が一年から数人選出され、
代々途切れることなく続いてきていました。
当時のバイトメンバーは、
U君、K君、N君、Y君、M先輩、私の計6人。全員男です。
M先輩のみ3年で、残りの5人は2年。その年、1年生はいませんでした。
この出来事は、このバイトに直接関係ありませんが、
このバイトをしている環境が問題でした。
全国的にもその周辺は自殺が異様に多く、嘱託の人たちから怖い体験話を聞かされたりしたものです。
自殺した遺体が毎年必ず数体は発見されますが、その発見者はほとんど早朝から出勤する嘱託の方々。
私たちは8~9時頃からの勤務ですので、幸いそういった現場には出くわしませんでした。

226 名前: 223 2006/07/27(木) 11:10:37 ID:ja8/AXvJ0
ある暑い日、私たちはそのバイトを終え「お疲れ会」を開くことになりました。
お疲れ会というのは、別段変わったことじゃなく、単にバイト後にみんなで雑談するだけのものです。
バイトは2シフトで終わるのが19時と23時の2種類。
お疲れ会に参加したいけど、早番だという場合は4時間ほど持ち場でヒマを潰して遅番の終わりを待つのです。
その日は珍しく、6人全員が参加しました。
「オレは今日参加しようかなー」というのが残り2人にも波及して、
「じゃあ何もないからオレも」という風に、早番全員が残っていました。

228 名前: 223 2006/07/27(木) 11:11:13 ID:ja8/AXvJ0
お疲れ会の場所は日によって異なりますが、その日は「風情があるやろ」ってことで、
2本の川が合流し、1本の鴨川になる中州に下りて行うことにしました。
中州に下りるには、2本の川に掛かった2つの橋の間から川べりへと石段を降りていくと着きます。
左右を川がサラサラと流れた砂利の上で座り、いろんな雑談をして楽しんでいました。
K君とN君、それからM先輩はお酒が好きで、近くのコンビニで缶ビールも買い込み、
少しだけ飲めるU君は付き合い程度、全く飲めない私とY君はジュースで、といった具合でした。

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