洒落怖
怪談投稿掲示板

この怖い話は約 5 分で読めます。

大学時代友達だった奴が体験した話。

そいつ(仮名N)とはオカルトサークルの飲み会で出会って意気投合した。怖い話が好き程度の俺と違いNはホラー映画や小説にも詳しく話を聞いてるだけで楽しかった。
結局俺はそのサークルには入らなかったがNとの付き合いはその後も続いた。Nは入り浸ってるネットの怪談投稿掲示板を教えてくれて俺もよく観るようになった。
Nも時々投稿しているらしかったがどれかは教えてくれなかった。俺は主にロム専だったが一度思い切って怪談を投稿したことがある。

割と好評だったから嬉しくてNにあれは俺だと明かしたら「話運びが辿々しい」「描写が甘い」と散々ダメ出し食らってうんざりしてしまい二度と書かなかった。
Nは他人の投稿を厳しく批判するのが常だった。もちろんそれは並々ならぬ読書経験に裏打ちされていて傍から見てももっともなことが多かった。
Nに同意する書き込みもあり特におかしいとは思わなかった。やがて最初の夏休みになって俺は九州の田舎にひと月ほど帰省した。
その間Nとはたまにメールしていて掲示板もよく見てた。お盆を過ぎた頃、掲示板に変化が表れた。
投稿に対して驚くほど敵意剥き出しのレスがつき始めたんだ。主旨はまあ妥当かなと思ったんだがとにかくきつくて。これまさかN?とメールで聞いたがそれは否定された。
しかしその日以来誰かの過激な批判レスは続いた。初めは反発もあったんだけど逆に支持する奴も出てきて、一週間もすると一つの投稿に対して複数の過激な批判レスがつくのが常態化しだした。
俺はこのままじゃマズいと思いNにメールしたがあいつはどうも反応が鈍かった。自分でも色々と書き込んでみたが流れを変えられず、掲示板の雰囲気は殺伐としたものになっていった。
休みが終わり、大学で久しぶりにNと再会した。俺は自分から掲示板のことを持ち出しこのままじゃヤバいと言った。
しかしNはこれで良いと言った。批判によって投稿のレベルが上がりよりよい掲示板になると。投稿が減ってきているとも訴えたが、過渡期だから仕方がない。いいものが残ればいいと言うだけ。
俺は愕然とした。内心の疑惑がはっきり形になった。過激な批判を始めたのはNだったんだ。

そう悟って以来、Nと会うことが少なくなった。掲示板は投稿ががくんと減り、たまにあったかと思えば待ち構えていたように批判レスがバンバンつくといった有り様だった。
この頃になると内容がただの誹謗中傷だったり何でも当てはまるような曖昧な文言だったりするものも多く、いわゆる荒れた状態だった。
俺は楽しい遊び場をNに奪われたようで腹立たしかった。
疎遠になったまま秋が深まり、大学祭が近づいてきた。スタッフだった俺は忙しく動き回っていた。ある日の夜チラシを作るためにPCルームへ行った。入室して見渡すとまばらにいた人の中にNがいた。
何やら一心不乱にキーボードを打ち込んでいる。横顔がひきつっていた。俺はわざと後方からそっと近づいていきNのPCの画面を覗いた。
掲示板に書き込んでいる最中だった。バカだの死ねだのといった単語やwの連なりが見えた。俺は背筋が寒くなり、そのまま退室した。続く

 

大学祭も終わり寒くなり始めた頃、Nを見掛けなくなった。週2、3コマ被ってる講義にも来なくなった。共通の知り合いに聞いても最近連絡を取っていないとのこと。
少し気にはなったがメールはしなかった。掲示板も見なくなっていた。そのまま年が明け、後期試験も終わり春休みが始まるという2月初め。Nからメールがきた。会ってくれないかという。
今更なんだと思ったが、メールを返さないでいると電話までかかってきた。よく判らないがとにかく切羽詰まった様子だけは伝わってきて、承知してしまった。
翌日大学近くの喫茶店で会った。およそ2ヶ月ぶりに見るNはげっそりやつれていてしょぼくれてザ・不健康て感じだった。開口一番、Nは言った。

「変な夢見るんだ」
「はあ?」
「出てくるんだよ。山なんだ。ずっと道が続いて。それで俺、今にも」
「ちょっとちょっと! 意味が判らんて。一体どうしたんだよ。ちゃんと説明してくれ」
俺が言うとNはおもむろに水をガブリと飲んだ。そしてしばし俺を見つめて、さっきとは打って変わってささやくような声で訊いた。
「お前まだ掲示板観てるか?」
「いいやもう長いこと観てない」
「観てくれないか」
「……別にいいけど」
久しぶりの掲示板は相変わらず荒れていて見るも無惨だった。
「開いたよ?」
「しばらくログを遡ってみて。12月半ばくらいまで」
誹謗中傷や下らない下ネタが視界を流れていく。やがて12月に入った。
「来たぞ」
「そこに話があると思うんだ」
「何て話?」
「山でドライブしてたらとかいう出だしの……」
「ちょっと待ってね……ああ、あった」
「それ読んでみて」

夏に友人たちとドライブしていたとき起こった話。
行ったことのない他県の山の中を当てもなく走っていた。緑が鮮やかで風が心地よかった。野郎ばかりなのに歌まで歌い出したりして。
同じような曲がりくねった道を行くこと数十分。あるカーブを曲がったとき一人が声をあげた。
「あ、何あれ!」
少し先に待避所みたいなスペースがあってそこに妙なものがあった。
「ガラス張りの……部屋?」
「やけに細長いけど」
「行って見ようぜ」
俺たちは待避所に車を入れて降りた。
それに近づく。
「床屋?」
俺はつぶやいた。透明な外壁の全長10メートルほどの部屋の中に理容椅子と思しきものが4脚ほど並んでいる。人の姿は見えない。向かって左端に手押しのドアがあった。
「へーこれすげえじゃん」
お調子者の一人が駆け寄って行った。俺たちもぞろぞろついていく。
ドアはあっさり開いた。中にはレジカウンターやロッカー、シャンプー台などがあり明らかに理髪店のようだった。
空調が作動してる様子はなかったが不思議と暑くはなかった。
「ちょうどいいじゃん。みんな座れよ」
お調子者が言うなり一番手前の椅子に座ってみせた。
誰もいないし俺らも座ってみた。正面に車の通らない車道が見える。セミの声。小鳥の囀り。しばしボーっとしていた。続く

この怖い話にコメントする

怪談投稿掲示板
ここ1か月ででよく見られています
サイト内でよく見られています