この怖い話は約 3 分で読めます。
「確かに不思議だが。しかし家賃はしっかり払ってくれている。管理会社としてそれ以上なにを望むんだね」
「妙だと思いませんか」
「思わんね」
「何故?」
「金は払ってくれているからだ」
埒があかない。
「お客様に迷惑をかけたりするようなことがあれば、君の査定にも影響してくるぞ。さあ、くだらないことに迷わされていないで、しっかり働くんだ」
くだらない?
くだらないことか?
所長も管理人も他の住人もどうかしてる。
しかし、遂に私の疑問も解ける時が来た。
一ヵ月後のことだ、
「ああ、君。こないだの404号室の方が退去されるそうだ。明渡しに立ち会ってくれ」
やった。
とうとう用事が出来た。
これはケチのつけようがない立派な用事だ。
退去する時とは残念だが、必ずタネを暴いてやる。
「くれぐれも失礼なことはするなよ」
404号室のベルを鳴らす。
「やあ、入らせてもらうよ」
ドアが開くや否や足を踏み出す。
よし!
今度は弾かれることもなくすんなりと部屋にはいれた。
こんなにあっさり入れるとちょっと拍子抜けするほどだ。
「早く確認をすませてくれないか・・・」
黒ずくめのゴキブリがなんか言ってるが知ったことか。
私はとうとう入れた部屋の中をじっくりと確認した。
何かおかしなことはないか、どこか妙なところはないかと必死に探した。
しかし小一時間も探したが何一つ妙なところはない。
ごく普通の部屋だ。
私はすっかり困り果ててしまった。
「参った。降参だよ。いったいどうやったのか本当に知りたいんだ。教えてくれないか」
「なんのことだ・・・」
「この部屋だよ。どうやって一部屋余分に繰り出したんだ」
「私は何もしていない。契約だから部屋が出来た。契約終了と同時に部屋は消える・・・もう確認は済んだだろう。私は帰らせてもらうが、あんたはどうするんだ?」
すっとぼけやがって。
何が契約だよ。
うまいこと言いやがって。
きっと何か秘密道具でもしかけてあるんだろう。
何がなんでも探してやる。
「ああーーいいとも。確認は終わったよ。きれいなもんだ」
「一緒に帰らないか・・・」
こんな薄気味の悪い奴と並んで歩くのなんてまっぴらだ。
「クク・・・では、お先に・・・」
そう言うと奴は部屋を出て行った。
それから奴が帰った後もひたすら部屋の中を探ったが何もわからない。
気が付けば外も薄暗くなって、どうやらもう夕方のようだ。
「一旦帰るか」
私はドアをあけて帰ろうとした。
が、ドアが開かないのだ。
カギをいじくってもだめだ。
いやな予感がして窓を開けようとした。
これも開かない。
ベランダにも出れない。
ふと時計を見る。
午後3時。
なのにどんどん暗くなっていく。
外から歩く音がする。
4階の他の住人が廊下を歩いているようだ。
ドアを叩き
「おーい、あけてくれ」
と叫んだ。
住人は全く気付かず通り過ぎる。
そもそも何で外が薄暗いんだ。
今はまだ3時なのに、なんで暗くなるんだ。
外を見ると今までの光景と全く違っている。
今までは外に見えていたのは、普通のどうってことない町並みだ。
なのに今、外には何も見えない。
真っ暗な空間がぽっかりあるだけだ。