この怖い話は約 3 分で読めます。

結婚してから俺たち夫婦はうまくやっていた。
結婚に反対していた俺の両親も、気立てが良い嫁を最終的に気に入ってくれたし。
うちの娘でいいのかと、まるで天皇陛下相手にした一般人のようにへこへこしていた嫁の両親とも、俺はうまくやれていた。
毎年長期休みが取れると、交互にお互いの実家に行くのは当たり前だった。
そしてそれが楽しみになっていた。
一昨々年の夏の休暇、その休暇は嫁の実家の番だった。
何度か過ごした嫁の実家は、俺の第二の家に思えた。
気に入らないのは、古い日本式家屋である為、虫やらが少々気に障る位だったか。
気が弱かったり、怖がりだったりすると、顔を思わず探してしまいそうな、木目のある天井も好きだった。

滞在三日目、嫁は昔の同僚と会う約束があるということで、朝から出かけていた。
俺は義父さんと、土産としてかっていったPS2でチェスゲームを過ごして半日を費やした。
都会にいると気づかないんだが、普段の自分がどれだけ時間に追われて生き急いでいたかと感じたのをよく憶えている。
この義理の両親は俺を半日単位で所有するのがまるで決まりというように、おやつ時以降は義母と過ごした。
その時、なんとなく一人になった義父がそわそわしているのに気づいた。
婿殿取られて寂しいのかね、なんて思っていると何度か目があって、その度に反らされた。
言いたくても言えない何かがある、ってかんじの気まずそうな振る舞い。
俺が義父の様子のおかしさに注視していると、義母がとりつくろうように茶菓子などを薦めてきた。
とりつくろうようにというのは、あくまで俺がそう感じただけで、義母の様子におかしな点はなかったが、妙に気がかりで声に出していってみた。

何かあるんですか。と。

570 本当にあった怖い名無し sage New! 2007/12/31(月) 19:56:04 ID:E6LwzGlX0
重く口を開いたのは義父でなく、義母だった。

実は、俺は嫁から結婚するにあたってある条件を突きつけられていた。
それは、嫁の過去に関する話を問わないということ。
俺にだって口が裂けても言いたくないし、思い出したくもない事がいくらでもあるし。
二つ返事でOKしていた。

義母の話はその過去に関する話だった。
嫁は、高校生から大学卒業、俺と大学院で出会うまで非カタギの組長に愛妾としてこっちで飼われていたらしい。
きっかけは、御両親が営んでいた料理屋の地主が、ヤクザになってしまったから。
そして、礼儀正しくない彼らは立ち退きを迫るようになったんだそうだ。
彼らのいやがらせは、エスカレートし、ついに営業時間に日参するまで発展した。
嫁とその組長はある時、運悪く鉢合わせたらしい。
組長は彼女を気に入って、彼女に取引をもちかけた。
御両親に、土地を原価で買う取引を持ちかける代わりに、儲からなかった分は飽きるまで妾になって返せというものだったんだそうだ。
彼女がどう考えてそう返事したのか分からないが、御両親の知らない所で彼女は承諾したそうだ。
ある日、根負けしたと言いにきた組長に、安値で土地を譲ってもらう取引をもちかけられて、ご両親は娘の苦しみも知らず喜んでしまったという。

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