この怖い話は約 2 分で読めます。

温泉旅行が好きで、ひなびた旅館に宿を取ることが多いです。
そこで私は異様な体験をしました。

天井と鴨居の間、欄間ですね、夜に眠っていたら、そこから覗いている目があったのです。
いっしょに泊まっていた友人を起こして、隣を確認しました。

ろくろ首の類かと思ったら鏡台が置いてあり、そこに足をかければ容易に覗ける構造です。
しかし嫌な体験をしたものだ……。ビジネスホテルにでも泊まればよかったと後悔しながら眠りました。

 気の晴れない朝をむかえて、旅館の人に昨晩の話をしました。
すると、事の由来を教えてもらうことができました。
「近親婚が繰り返されることを防ぐために、若い旅人を見つくろう風習がかつてあった。
ところが、見知らぬ相手と体を交えるのを望まなかった娘が自害して、以来、そのような現象が起きるようになった……」。
よくある話です。大変申し訳なかった、他のお客さんからもときどきそのような苦情を受けるのですと謝罪されました。

 むしろ後から知って、怖気の走った事実があります。
旅館をあとにして、たまたまその地域の人と話をする機会があったのですが、話に聞いたような風習は存在しなくて、
それよりも、とある旅館をいとなむ人物に窃視症の傾向があって、町としても困っていると聞かされたことでした。

あのときに私を覗いていたのは、因習の話を作り上げた旅館の人だったのです。
おそらく今でも覗き続けているのではないでしょうか。

bronco

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bronco

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