この怖い話は約 4 分で読めます。

 ついにその日が来た。私は女のすぐ近くにいる。渇きを潤すことができる
喜びが、私を支配した。怯えた女が、何か言っている。大粒の涙を流して。
「私、死体を見たときに気づいたの。」水分がもったいない。水を無駄にする
この女が私は許せない。「お父さんが、親戚を説得してくれたから。」私は、
水をもらう事を諦めた。水の大切さの分からぬこんな女に頼んでも仕方ない。
そうさ。奪い取ればいい・・・・・。         (つづく・・・。)

339 継呪の老婆 ◆38avq92H7U sage New! 2005/12/04(日) 17:31:39 ID:orhP/4If0
薄暗い部屋。ざわつく風の音。怯える女。私は紫色の長い舌をのばし、女の
口から体内に突っ込んだ。水分が、舌を伝って喉を潤す。永遠の渇きから解放
される快感が、私の脳を支配した。存分に渇きを潤した。女が、床に崩れた。
 突然、周囲がはっきりと見えた。見慣れた場所。実家。妹のネネの部屋。
見下ろすと、女が干からびて倒れている。女は、今正に枯れようとする喉で
かすれた声を出した。「だい・じょぶ・。ナナも・おと・さんも・・のんだ
・・から。呪は、私・たちで・・引き継ぐ・から・・の・ろいは・・拡散・
させ・・ない・。町・・に・・うまれ・た・・ものの・・宿・・命。」

渇きから解放された私の目に、涙が一気に溢れた。「どうしてなの!!!」
私は、絶望に泣き叫んだ。そのとき、ナナと父が部屋に入ってきた。
ナナが干からびたネネの肢体にすがりつき、泣いた。「ネネ。ゴメンね。私も
すぐに行くからね。寂しくさせないからね。」ナナは、ネネの干からびた口に
何度も水を含ませながら、優しく語りかけた。父も涙を堪え、拳を握った。
「次はオレが行くからな。サト、ネネ。親戚も説得したぞ。それに・・・。」
父の手には、あの巾着袋が握られていた・・・。

私は、理解した。家族が私の遺品を整理した時、袋を見つけ出したことを。
家族が、私同様、集落の呪いを知っていたことを。私の大切な家族は、トモの
語った真実を知らない。正義感から、自ら進んで呪いの罠に捕らわれたのだ。
私は叫んだ。「呪は拡散しない!すぐに袋を捨てて!」しかし声は届かない。
私は巾着袋を取り上げようと、手を伸ばした。しかし、手も届かなかった。
絶望の中で、闇が私に手を伸ばしてきた。家族の姿が遠のく。泣き叫ぶ私を、
暗闇が、再び引きずり戻していった・・・・・。    (つづく・・・。)

341 継呪の老婆 ◆38avq92H7U sage New! 2005/12/04(日) 17:38:09 ID:orhP/4If0
 私は、目を覚ました。眩しい光が、私を包んでいた。ふと、暖かい手が、
私の手を握った。視線を上げると、その先には、トモが微笑んでいた。
「おかえり。また会えたね。サト。」トモは、両腕で私を抱きしめてくれた。
私は、涙が止まらなかった。100年の孤独から解放された気持ちだった。
「ゴメンね。そしてありがとう。」トモが言った。周囲に、お婆さんがいた。
ベッコウの髪留めが、老婆の頭を美しく飾っていた。老婆は、トモの部屋で
落としたベッコウの髪留めを大切そうに手でなでて、微笑んだ。よく見ると、
クラタも。その姉も、親も、皆いる。私は、トモを抱き返し、囁いた。
「大丈夫。全部分かったよ・・・。トモ。」私は理解した。もうすぐ、皆、
ここへ来る。ネネもナナも、お父さんも。別れは一寸の間だけ。苦しみと
恐怖を経て、最後にはここにたどり着く。自らを犠牲にし、呪いに対抗した
者は、必ずここにたどり着く。

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bronco

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