田舎・地方の習慣
私も、いつか

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110 1/17 2011/06/02(木) 00:25:20.52 ID:+XA56KO70
某半島の先の方にあるひっそりとした村の話です。

話は江戸時代より前に始まります。
ある偉いお坊さんがいました。
そのお坊さんは自分が老齢になったことから一門の後継に
地位を譲り、救いを求める人々を導くための旅に出ました。
西から東へ北から南へ色々なところを廻ったお坊さんは
その村に行き着きます。そこでは貧しいながらも
正直で親切な村人たちが慎ましく暮らしていました。
海と山に囲まれた隠れ里のような村で、
貧しい村落のことで寺や神社はおろか祠すらありませんでしたが、
お坊さんは珍しい旅人として快く迎え入れられるのでした。
111 2/17 2011/06/02(木) 00:27:24.43 ID:+XA56KO70
そのお坊さんは立派な精神の持ち主でありました。
しかし聖職者が崇められる時代のことです。
一門にいた頃の高い地位を隠しての旅とはいえども
豊かな村では地主の家で畳の間に寝ることも少なくなく、
立派な寺に泊まることも、大層な饗応を受けることもありました。
その村での待遇は心こそ篭っていたものの
村人たちの粗末な家を準々に泊まり歩くというもので、
心の片隅では「貧しいところだ」と感じておりました。

115 3/17 2011/06/02(木) 00:29:33.21 ID:+XA56KO70
1ヶ月ほど村落中の家を巡っては、弔いを挙げられずに葬った家人はいないか?
どこか体の悪いところはないか?と聞いて回ることが続きました。
そうしたお勤めも村中を回り終え、そろそろこの村とも、
という頃にやってきた旅人がありました。
旅人は流行の病気にかかっており、身につけた物も殆ど無いばかりか
辺りに不快な臭いを発していました。
お坊さんは村落の住人よりその話を聞き、
「ここは私のようなものが率先して」と思い旅人のもとへ向かいます。

116 4/17 2011/06/02(木) 00:31:45.83 ID:+XA56KO70
しかし病気の旅人の元には農作業の合間に住民が顔を出しては
着るものを与え、食べ物を与え、薬草を持ってきては
介抱をしてやるのでした。お坊さんは自分の奢っていた部分を感じ、
恥じ入りつつもその旅人の回復を祈るお経をあげてやるのでした。
旅人はそのまま息をひきとりましたが、村人に手厚く葬られました。
村人の中にはその旅人のものと思われる病を得るものもありました。
高齢であったお坊さんも病に負け床に伏します。
村人の看病もあり、数日後にお坊さんは回復をしますが視力を失います。

117 5/17 2011/06/02(木) 00:34:24.91 ID:+XA56KO70
目の見えないお坊さんは旅を続けることができなくなりましたが
村人はお坊さんに鈴を持たせ、鈴の音が聞こえれば手をとって先を歩き、
食事を作って運んでは以前と変わらず不便にならぬよう接するのでした。
「私は仏門に一生を捧げた。なお、奢りや油断を切り離せぬ。
このような貧しい村の人々がなぜまっすぐに生きられるのか。」
お坊さんは村の子どもに手を引いてもらい、旅人の墓の前で自分に問いかけました。
旅人の墓では花が香っており誰かが新しく供えてやっているようでした。
お坊さんはあることに気づきます。

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