師匠シリーズ

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902 魚  1/7 ウニ 2006/02/22(水) 19:55:14 ID:CqBHiC0Y0
別の世界へのドアを持っている人は、確かにいると思う。
日常の隣で、そういう人が息づいているのを僕らは大抵知らずに生きているし、生きていける。
しかしふとしたことで、そんな人に触れたときに、いつもの日常はあっけなく変容していく。
僕にとって、その日常の隣のドアを開けてくれる人は二人いた。それだけのことだったのだろう。

大学1回生ころ、地元系のネット掲示板のオカルトフォーラムに出入りしていた。
そこで知り合った人々は、いわば、なんちゃってオカルトマニアであり、高校までの僕ならば素直に関心していただろうけれど、大学に入って早々に、師匠と仰ぐべき強烈な人物に会ってしまっていたので、物足りない部分があった。

しかし、降霊実験などを好んでやっている黒魔術系のフリークたちに混じって遊んでいると、1人興味深い人物に出会った。
「京介」というハンドルネームの女性で、年歳は僕より2,3歳上だったと思う。

903 魚  2/7 ウニ 2006/02/22(水) 19:56:03 ID:CqBHiC0Y0
じめじめした印象のある黒魔術系のグループにいるわりにはカラっとした人で、背が高くやたら男前だった。
そのせいかオフで会ってもキョースケ、キョースケと呼ばれていて、本人もそれが気にいっているようだった。

あるオフの席で「夢」の話になった。予知夢だとか、そういう話がみんな好きなので、盛り上がっていたが京介さんだけ黙ってビールを飲んでいる。
僕が、どうしたんですか、と聞くと一言
「私は夢をみない」
機嫌を損ねそうな気がしてそれ以上突っ込まなかったが、その一言がずっと気になっていた。
大学生になってはじめての夏休みに入り、僕は水を得た魚のように心霊スポットめぐりなど、オカルト三昧の生活を送っていた。
そんなある日、目を覚ますと見知らぬ部屋にいたのだった。

904 魚  3/7 ウニ 2006/02/22(水) 19:56:42 ID:CqBHiC0Y0
暗闇の中で、寝ていたソファーから身体を起こす。
服がアルコール臭い。酔いつぶれて寝てしまったらしい。
回転の遅い頭で昨日のことを思い出そうと、あたりを見回す。
厚手のカーテンから幽かな月の光が射し、その中で一瞬、闇に煌くものがあった。
水槽と思しき輪郭のなかに、にび色の鱗が閃いて、そして闇の奥へと消えていった。
なんだかエロティックに感じて妙な興奮を覚えたが、すぐに睡魔が襲ってきてそのまま倒れて寝てしまった。

次に目を覚ましたときは、カーテンから朝の光が射しこんでいた。
「起きろ」
目の前に京介さんの顔があって、思わず「ええ!?」
と間抜けな声をあげてしまった。
「そんなに不満か」
京介さんは状況を把握しているようで、教えてくれた。
どうやら、昨夜のオフでの宴会のあと、完全に酔いつぶれた俺をどうするか、残された女性陣たちで協議した結果、近くに住んでいた京介さんが自分のマンションまで引きず
って来たらしい。

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