この怖い話は約 3 分で読めます。

121 名前:あなたのうしろに名無しさんが・・・ 投稿日:2001/05/17(木) 01:35
家の外、庭先で鳴く虫の声に混じって聞こえる木々のあいだを縫う風の音は、
何か人の呻き声のようにも聞こえます。
その音にじっと耳を傾けると、
それが外からではなく家の中から聞こえるようにさえ感じました。
不安感と共に、私は蒲団のなかで身体から滲む汗に不快感を抱きながら
いつのまにか眠りに落ちていました。
夢を見ました。恐ろしい夢でした。夢の中には私がいました。
幼いころの私です。その私の首を父が絞めているのです。
その後ろには祖父もいました。
私は恐怖を感じましたが、不思議と苦しくはありませんでした。

122 名前:あなたのうしろに名無しさんが・・・ 投稿日:2001/05/17(木) 01:38
翌朝目覚めると、隣で真っ青な顔した彼女が蒲団をきちんとたたんで、
帰り支度をしていました。
寝汗を吸い込んだTシャツを脱ぎながら、
私は彼女にどうしたのとか尋ねました。
彼女はただ、帰る、とだけ言いました。
昨日きたばかりなのに……と言葉を濁していると、
あなたが残るなら、それは仕方がないわ、でもわたしは一人でも帰る、
そう青ざめた顔のまま言いました。
はっきり言って私もそれ以上実家にいたいとは思っていませんでした。
しかし、両親になんと言えばいいのか分からないです。
なんと説明すれば良いのか、そんなことを考えていると、
昨夜の夢が脳裏にちらつきました。幼い私の首を絞める父。
とにかく私も蒲団をたたみ、着替えを済ませてから、居間に向かいました。

123 名前:あなたのうしろに名無しさんが・・・ 投稿日:2001/05/17(木) 01:42
大きなテーブルの上座に腰掛けた父は新聞を広げていました。
再び悪夢が脳裏を掠めます。わずかな時間に私はいろいろと考えてから、
口を開いて、彼女の体調があまり優れないし、今日、もう帰ろうと思うんだ、
そう言いました。言ってから何かおかしなことを言っているなと思いました。
体調が悪いのにまた電車に乗って長いあいだ移動するなんて。
しかし、父は深く一度ため息をついてから、
そうか、そうしなさい、あのお嬢さんをつれて東京に戻りなさい、
そう言ったのです。なにか呆然となりました。
自分のわからない事柄が自分の知らないところで勝手に起こって進んでいる、
そして自分はその周りでわずかな何かを感じているに過ぎない、そんな気持ちです。
居間を後にして、部屋に戻ると彼女はもう帰り支度をすべて終えて、
今にも部屋から出ようとしているところでした。

124 名前:あなたのうしろに名無しさんが・・・ 投稿日:2001/05/17(木) 01:44
私は彼女に少しだけ待ってくれと言い、自分も急いで帰り支度をして、
彼女といっしょに両親のもとへ行きました。
父も母も元気でとだけ言い、それ以上何も言いませんでした。
私は何かを言わなければ、何か訊いておかなければいけないことがある、
そう思いましたが、それが何かわからない、そんな状態でした。
彼女の一刻も早くこの家から離れたいというのが、
その様子から見て取れたので、私はお決まりの別れ言葉を残し、家を出ました。
家から出ただけで、あの澱んだ空気から開放された感があり、
私はずいぶんと気が楽になりました。
しかし、彼女は駅に着き電車に乗るまで、何一つしゃべりませんでした。
一度も振り返ることなく足早に歩いて、少しでも家から遠くに、そんな感じです。

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