師匠シリーズ
写真

この怖い話は約 4 分で読めます。

437 写真 ウニ New! 2006/06/03(土) 12:23:06 ID:3rNkYIQb0
大学2回生の春ごろ、オカルト道の師匠である先輩の家にふ
らっと遊びに行った。
ドアを開けると狭い部屋の真ん中で、なにやら難しい顔をし
て写真を見ている。
「なんの写真ですか」
「心霊写真」
ちょっと引いた。
心霊写真がそんなに怖いわけではなかったが、問題は量なの
だ。
畳の床じゅうにアルバムがばらまかれて、数百枚はありそう
だった。
どこでこんなに! と問うと、
「業者」と写真から目を離さずに言うのだ。
どうやら大阪にそういう店があるらしい。
お寺や神社に持ち込まれる心霊写真は、もちろんお払いをし
て欲しいということで依頼されるのだが、たいてい処分もし
て欲しいと頼まれる。
そこで燃やされずに横流しされたモノが、マニアの市場へ出
てくると言う。
信じられない世界だ。

438 写真 ウニ New! 2006/06/03(土) 12:24:13 ID:3rNkYIQb0
何枚か手にとって見たが、どれも強烈な写真だった。
もやがかかってるだけ、みたいなあっさりしたものはない。
公園で遊ぶ子どもの首がない写真。
海水浴場でどうみても水深がありそうな場所に無表情の男が
膝までしか浸からずに立っている写真。
家族写真なかに祭壇のようなものが脈絡もなく写っている写
真・・・
俺はおそるおそる師匠に聞いた。
「お払い済みなんでしょうね」
「・・・きちんとお払いする坊さんやら神主やらが、こんな
もの闇に流すかなあ」
「じゃ、そういうことで」
出て行こうとしたが、師匠に腕をつかまれた。
「イヤー!」
この部屋にいるだけで呪われそうだ。
雪山の山荘で名探偵10人と遭遇したら、こんな気分になる
だろうか。

439 写真 ウニ New! 2006/06/03(土) 12:25:56 ID:3rNkYIQb0
観念した俺は、部屋の隅に座った。
師匠は相変わらず眉間にしわを寄せて写真を眺めている。
ふと、目の前の写真の束の中に変な写真を見つけて手に取った。
変というか、変じゃないので、変なのだ。
普通の風景写真だった。
「師匠、これは?」
と見せると、
「ああ、これはこの木の根元に女の顔が・・・あれ? 
ないね。 消えてるね」
まあ、そんなこともあるよ。
って、言われても。
怖すぎるだろ!
俺は座りしょんべんをしそうになった。
そして部屋の隅でじっとすることし暫し。
ふいに師匠がいう。
「昔は真ん中で写真を撮られると魂が抜けるだとか、寿命が
縮むだとかいわれたんだけど、これはなぜかわかる?」

440 写真 ウニ New! 2006/06/03(土) 12:27:05 ID:3rNkYIQb0
「真ん中で写る人は先生だとか上司だとか、年配の人が多い
から、早く死に易いですよね。昔の写真を見ながら、ああこ
の人も死んだ、この人も死んだ、なんて話してると自然にそ
んなうわさが立ったんでしょうね」
「じゃあこんな写真はどう思う」
師匠はそう言うと、白黒の古い写真を出した。
どこかの庭先で着物を着た男性が3人並んで立っている写真
だ。
その真ん中の初老の男性の頭上のあたりに靄のようなものが
掛かり、それが顔のように見えた。
「これを見たら魂が抜けたと思うよね」
たしかに。本人が見たら生きた心地がしなかっただろう。
師匠は「魂消た?」とかそういうくだらないことを言いなが
ら写真を束のなかに戻す。
「魂が取られるとか、抜けるとかいう物騒なことを言ってる
のに、即死するわけじゃなくて、せいぜい寿命が縮むってい
うのも変な話だよね」
なるほど、そんな風に考えたことはなかった。

この怖い話にコメントする

「写真」と関連する話(師匠シリーズ)

写真