師匠シリーズ
怪物 「転」

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21 師匠コピペ1 sage 2008/07/21(月) 09:56:09 ID:443O+ny20
21 名前:怪物  起承「転」結   ◆oJUBn2VTGE [ウニ] 投稿日:2008/07/21(月) 00:48:03 ID:qlom6ToI0
図書館からの帰り道、私はクレープを買い食いしながら商店街の路地に佇んでいた。
夕焼けがレンガの舗装道を染めて、様々なかたちの影を映し出してる。道行く人の
横顔はどこか落ち着かないように見える。みんな心の奥深い場所で、説明しがたい
不安感を抱いているようだった。
そう思った私の目の前を女の子たちの笑い声が通り過ぎる。
息を吐いて、最後の一口を齧る。どの人の表情も、私の心の投影なのかも知れな
い。ロールシャハテストだ。笑い顔以外に、すれ違うの人の気持ちを理解できる機
会なんてまずないんだから。
結局あの図書館の本の落下の原因はわからないままだった。こんなことが、昨日の
水曜日から今日にかけて、街の至る所で起きているらしい。
私は起こっていることより、この一連の出来事の向かう先のことが気に懸かってい
た。いったいどういうカタルシスを迎えるのか。そう考えながら目を閉じると、何
かをせずにはいられない気持ちになるのだった。
『エキドナを探せ』
その言葉に、糸口を見出せそうな気がする。さっきからそのことばかり考えている。
クレープの包みをクズ籠に放る。
私にこのヒントを投げ掛けた間崎京子は、街中で起こっている怪異を怪物に例え
た。そしてその怪物たちを生み落とすのは蝮の女エキドナだ。これがいったい何の
隠喩なのか定かではない。
定かではないが、私はこう考えている。
少なくとも間崎京子は、一見バラバラに発生しているように見える怪奇現象が単一
の根っこを持っていると思っている。
それも、ナントカ現象だとかナントカ効果だとかといった包括的ななにかではなく、
信じがたいことにそれはたった一つの”人格”と言えるような存在に収束されている
ような気がするのだ。
ハ。
こんなこと、誰かに話せるようなものではない。

22 師匠コピペ2 sage New! 2008/07/21(月) 09:59:51 ID:443O+ny20

23 怪物   ◆oJUBn2VTGE ウニ New! 2008/07/21(月) 00:51:48 ID:qlom6ToI0
つくづく一人が好きだな。
暗鬱な気持ちが、帰り道をやけに遠くさせた。
家に帰り着き、玄関の前に立った時から気づいていたが、やはりその夜の晩御飯は
カレーだった。
「そんなに水ばかり飲んでると消化が悪くなるわよ」
という母親の小言を聞きながらカレーをスプーンでかき込み、水で流し込む。
「今朝どっかで工事してた?」
さりげなく聞いてみたが、「そういえば、どこでやってのかしらね」と母親が首を
傾げる。
父親は「知らん」と言いながら夕刊を読んでいる。妹は身体を反転させて皿を持っ
たまま居間のテレビを見ている。
父親が読み終わるのを待ってから夕刊に目を通したが、特に変わった記事はなかっ
た。
それから自分の部屋に引きあげる。
明かりとラジオをつけて、部屋の真ん中。隅に転がっていたクッションを引き寄せ
る。
なにをすればいいのか正直分からない。
とりあえず昨日ファフロツキーズの項だけ読んで投げていた『世界の怪奇現象ファ
イル』を通して読んでみることにした。
ラジオがくだらない話題でけたたましい笑い声を出し始めたのでスイッチを消し、
適当なCDをかける。
そして黙々と頁をめくる。
どこかで聞いたことがあるような怪奇現象ばかりが列挙されているが、情報の量と
質にはかなり偏りがあり、ファフロツキーズの項のような詳細な解説はあまりなか
った。
そんな中、CDの7曲目が過ぎたあたりだっただろうか。私は半分読み飛ばしかか
っていた文の中になにか引っかかるものを感じ、思わず姿勢を正す。
それは『ポルターガイスト現象』の項だった。

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