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499 本当にあった怖い名無し 2010/08/06(金) 23:08:20 ID:Q7CX8gv80
Aさんはそのまま外に飛び出し、おそらくは私物であろう軽トラックの、助手席側のドアを開け、なにやら床下を探っているおばさんを見つけた。
奇声を上げながら全速力で駆け寄っていったところ、気付いたおばさんは、恐怖にひきつった顔をして、トラックの中に飛び込んでドアをロックした。
すんでのところで間に合わなかったAさんは、運転席側にまわり、ドアを開けようとしたが、間一髪おばさんがロックするほうが早かった。Aさんは、逃がしてなるかとばかりに軽トラックの荷台に飛び乗った。
運転席にすべりこんだおばさんが、車のエンジンをかけ、携帯電話になにかを怒鳴りながら急発進した。Aさんはバランスを崩し荷台から落下し、頭をしたたかに地面にぶつけた。

Aさんはその時、脳震盪を起こしたらしい。なにか生き物を殺したい、と思いながら、体が思うように動かせない自分は、なんと不幸なのだろう、と地面に大の字になったまま、夕焼け空をにらんで男泣きに泣いた。

505 本当にあった怖い名無し 2010/08/07(土) 00:01:32 ID:XkpgPnCm0
その後しばらくして、いまだ動けないAさんは、おばさんからの電話をうけて駆けつけたらしい男数人に取り囲まれた。
体は動かないが、殺していい生き物が近くに来たことで、Aさんはまた極度の興奮状態におちいった。

一番楽に殺せそうな年寄りが、Aさんに対して、「変な言葉をわめきながら」、「なんだか臭い、変な水」を振り掛けた。
その瞬間、Aさんは自分が何をしているのかわからなくなり、一瞬にして眠りに落ちた。

507 本当にあった怖い名無し 2010/08/07(土) 00:04:16 ID:Q7CX8gv80
小さな診療所のベッドの上で目が覚めたAさんは、普段の落ち着きを取り戻していた。
警察官と、先の年寄りが部屋の隅に座っていた。警察官に訊かれるまま、Aさんはおこったことの全てを話した。自分がなぜあんなふうになったのかわからない、とも伝えた。
Aさん自身ですら、自分がしたこと、感じたことを信じられないのに、ましてや警官が信じてくれようはずもない。逮捕されるのか、と半ば諦めたが、特に目に見える被害がなかったことから、厳重注意で済んだ。
Aさんは、わけがわからないながらも、何度も謝罪の言葉を伝えた。

別室にいたおばさんに謝罪しようとしたところ、おばさんから、それには及ばない、との言葉が返ってきた。年寄りにいたっては、なぜか同情的ですらあった。

年寄りとおばさんとが、事情を説明してくれたところによると、Aさんは、『ムシャクル様』にたたられた、とのことだった。『ムシャクル様』とは、その地方の地域信仰の対象で、いうなればタタリ神に近いものらしい。
『ムシャクル様』の名前は、「武者来る」、あるいは「武者狂う」からきており、これにたたられた者は、「生き物を殺さなければならない」との強い強迫観念に縛られ、しばしば実際に殺してしまう。
この土地では、数年に一度、『ムシャクル様』にたたられる者が出るという。たたられる人に共通点はなく、なんらかの禁忌を犯したものか、人により故意に呪いがけされたものかはわからないらしい。

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bronco

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