トライアングル

この怖い話は約 3 分で読めます。

中学校の頃の音楽室での話。
音楽室の後方の壁に食器棚のような棚があって、普段はカーテンがかかっているんだが、中を覗くと、
すごい古い誰かの手書きの楽譜とか、完全に色が変色した古い教科書、日付を見ると昭和34年とかの資料といった
どうやら授業ではもう使わないけど、捨てるに捨てらんない系らしきもの? が色々入っていた。

右下が引き出しになっていて、中にはやはり古いカスタネットや笛のようなもの、
あとボロッボロに錆びて完全にこげ茶色になっているトライアングルが入っていた。

この音楽室には噂があり、6時を過ぎてからこの音楽室でこの茶色のトライアングルを3回鳴らすと、
壁に貼ってある作曲家の肖像画の目線が一斉に凝視してくるというものだった。

ある日、友人のAが女子達とこの話で盛り上がり、
すっかりテンション上がったAが、これを試して、どうなったかあとで報告してやると言い出した。
一人でやっても証拠が無いからっつって、Aと同じくバスケ部だった俺がどうしても一緒に行ってくれと言われ、ついて行くことになった。

この音楽室には普通の教室と同じくドアが2つある。黒板側と後ろ側。
後ろ側のドアのところは木琴と鉄琴が置いてあって足の踏み場があまり無いんで、
授業で出入りする時も生徒は黒板側しか使わない。後ろ側のドアは常時鍵がかかっている。

放課後、音楽の先生が黒板側のドアは必ず鍵をかけてチェックするが後ろ側しない。
コーラス部の人に頼んで後ろのドアの鍵を開けといてもらえば、先生のチェックを逃れて後ろ側のドアを開け、木琴とかもちょっとずらせば中に入れる。
そんなわけである日、練習終わったあと中に進入。初夏の頃だったので6時でもまだ結構明かるかった。
俺ははっき言って怖かったので他の部員も誘いたかったが、Aはそれをやると反対する奴が居そうでヤダというから結局2人っきり。
引き出しからトライアングルを取り出し、Aが鳴らす。
チーン。   チーン。   チーン。
おそるおそる肖像画を片っ端から確認する。どうやら変化は何もない。三打目のトライアングルの残響も止み、黒板のところの時計の秒針しかきこえない。
俺はこの雰囲気だけでなんか怖い。音楽室の空気が一気にずっしり重くなったような気がした。
Aは全然怖がってない。「何も起こらないのかなー」と顔に笑みを浮かべ、さらにトライアングルを鳴らす。
チーン。四打目。   チーン。5打目。
俺はびびりつつAの様子をずっと見てた。

チーン。6打目。
6打目は唐突にAがトライアングルを手で握って音を止めた。
「出よう」
Aがトライアングルを席に置き、俺の袖を引っ張りドアのところに引っ張って行く。その顔に笑みは無い。
「どうした?」「いいから」
俺はそこそこ強い力で俺を音楽室から廊下につれ出された。
こいつは一体何を見たんだろうか? 音楽室からは出たのでもういいかと思って
「えっ、何、何、なんか出・・・」「ちょ、(ヒーッ)」
Aは俺の『出た』という単語を止めたかったのだとわかった。が、取り乱していて呼吸が整わず、(ヒーッ)と息で音を立てただけだった。

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