この怖い話は約 3 分で読めます。

8年前の夏の事。

珍しく朝4時だか5時頃に目が覚めて、なんとなく窓のカーテンを開けたら丁度夜明けだった。
おおっ、と思ってベランダに出て白んでいる方を見やると綺麗な日の出
このマンションに住み始めて初めて見る日の出だなーと2秒ほど見とれててようやく気付いた

そっちは北西の方角。日が出るわけが無い

え?あれ?とパニクってると、ふと斜め向かいのマンションのベランダに人が居るのが視界に入った。
こっちに手を振ってる…というか両手をこちらに突き出して「待て待て」とやるように手首を振り振りしてる
口も動いて何か伝えようとしているようだが何も聞こえない
え、なに、あの太陽なに、アンタ何、と更に混乱してるうちに意識が無くなった
次に目が覚めたのは病院のベッドの上。「その日」から6日が経っていた。
頭蓋骨陥没骨折
後頭部が完全に形が変わるほど滅茶苦茶。
母に聞いたところによると俺はその朝、ベランダで頭を鮮血に染めて倒れてたんだと。
血痕からすると、俺はベランダで壁(外側じゃなくて家の内側に向かうほう)に後頭部を激しく打ち付けて頭を割ってそのまま倒れたらしい。

いやいやいやそんなわけないだろと。後頭部を激しく壁に打ちつけ、ってどんな動きしたらできるんだと。
滑って転んだならまだ分からなくは無い、でも壁の血痕は立った状態での頭の高さにあったんだ。

結局何が起こったのかは分からないまま、頭は致命傷にはならず外傷も治ったものの
俺は酷い頭痛と不眠症、ときたま来る麻痺に悩まされる羽目になった。

でだよ。
最近この時の記憶がおぼろげに湧き上がって来たんだわ。

あの手を振る人を見た直後、俺は何かに気付いて別の方向を向いたんだ。
そしたら何故かベランダに中学生ぐらいの女の子が立っていて、
おもむろに俺の顔に手を伸ばすとそのままふん掴んで俺は凄い勢いで壁に叩きつけられた。

「ゴッ!ググググ ゴッ!グググ」

何度も激しく叩きつけては押さえつけられ、しまいには頭蓋骨が割れて
後頭部が叩きつけられる感触が生々しく柔らかくなったことまで思い出した。

でもこの記憶も当然おかしい。
なんだよ少女がマンションのベランダに侵入て。JCに頭割られるて。有り得ないだろ。
そもそも北西に太陽とか、早朝に手を振る人とか って時点でおかしい。

順当に考えれば俺が寝ぼけて勝手に転んだんだろう、んでもって
変な記憶は俺の錯乱した脳が勝手に捏造したんだ。
でもそれにしては血痕の位置が…

本当は何があったのか、誰も知らない。何かに遭った俺にも、何も分からない。

bronco

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bronco

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